(これまでの歩み)
岐阜県岐阜市生まれ。小学校教諭の両親のもとに育ち、自らもファーストキャリアとして教員を選択。大学卒業後、学校法人三幸学園にて専門学校・大学の教員となり、その後ベンチャー企業2社を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。2016年9月、本業の傍ら「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる任意団体『先生の学校』を立ち上げる。2020年3月、株式会社ボーダレス・ジャパンの仕組みで株式会社スマイルバトンを創業。『先生の学校』他、教育関連事業などを手がける。夢は、女優の天海祐希さんとお仕事で共創すること。
先生とは新しい世界の扉を開いてくれる人
うちは両親ともに小学校の先生で、私にとって先生は身近な存在でした。一人っ子だった私は、お兄ちゃんやお姉ちゃんがいる友達が常に新しい情報を知っていることがうらやましくて仕方がなかったんです。そんな私に最先端の情報を教えてくれたのは、いつも学校の先生でした。両親も家で仕事のグチを言うことなど一切なく、楽しそうに働いていたことをよく覚えています。
学生時代はバスケに明け暮れていたので、高校の進路選択の際に特にやりたいことが見つからず、「食べることが好き」という理由だけで栄養士の資格が取得できる大学に進学しました。しかし大学入学早々に、進路選びを誤ったことに気づき、ファッションの勉強がしたくなって、夜間の専門学校とダブルスクールをすることに。そこで、自分の夢に向かってまっすぐ努力する学生たちを近くで見て、強く影響を受けます。就職を考える頃には、これまでの学びを全て生かすことができる職業として、先生になるという選択肢が自然に生まれました。中でも、専門学校で出会った仲間たちの姿が忘れられず、「専門学校の先生になりたい!」と思って卒業後は学校法人三幸学園に就職。ここで8年間、先生の仕事と、生徒募集の広報の仕事に出会います。
命を預かる責任の重さ
先生という職業に対して、天職だと思えるほど充実した日々を過ごしていました。ところが、転機は突然訪れました。2011年3月11日の東日本大震災です。その日は春休み中でしたが、もし800人の生徒たちが目の前にいたらと、恐ろしくなりました。先生は、生徒に安心・安全な場を提供し、何かあれば命を守らなければいけない。当時私は、しゃかりきに頑張って一足飛びにリーダー職についたものの、自身の成長と肩書きとのアンバランスさに悩んでいた時期でした。天職だと思って働いてきたけれど、先生という仕事の責任の重さ、その深い部分までは理解できていなかった。そう思い至る出来事でした。また、生徒の進路相談の際に、私自身がいわゆる「社会」と呼ばれる場所に対して無知であることにも悩んでいました。何もかも知っているような顔をして生徒たちの前に立っていたけれど、私は「何も知らない」のではないかと。井の中の蛙のような不安を感じた私は、自らの目で「社会」と呼ばれる場所を体験したいと思い、先生を辞めてベンチャー企業2社、その後はリクルートで広報として働きます。
リクルートとの出会いは私のターニングポイントになりました。起業家精神溢れる企業文化に触れる中で、徐々に私も自分の意思で何かを始めたいと思うようになり、在職中に「先生の学校」を複業としてスタートさせました。また、株式会社ボーダレス・ジャパンと出会い、独立気運の強い仲間たちの後押しもあって、自分らしい起業のあり方として「スマイルバトン」を創業するに至りました。
コップの水はもう十分に満たされた
第一子が生まれ、36歳になったとき、ふとこんなことを思いました。「もう私の人生は干支が3週した。今まで自己中に生きてきたけど、自分のために人生を使うのは終わりでいい」。自分の欲は果てしないけど、私のコップには十分に水が注がれ、もう溢れている。これからは、次の時代を生きる子どもたちのために、持てる時間を使いたい。不登校が30万人、自殺者が年500人と、子どもたちから聞こえてくる悲鳴に対して、自分ができるケアをしたい。その本質的な解決策として、未来のそばにいる大人=先生が、自分らしく働ける環境を作ろう。それが「先生の学校」の出発点です。
先生って、肯定される場が少なくて、何でもできて当たり前。でも本当は知らないことだってたくさんある。重い鎧を自ら背負ってしまっている先生もたくさん見てきました。その人たちがもっと自分らしく、子どもと接することができるようにしたい。私は、先生がどれだけ素晴らしい仕事かよく知っているので、だからこそ応援したい。そう思っています。
人が変わるための転機をつくりたい
「先生の学校」にとどまらず、スマイルバトンはさまざまな事業にチャレンジしています。そのすべてに共通する指針は、なりたい自分になるための「転機」を提供すること。大人も子どもも、何かに縛られることなく、伸び伸びと自分を生きられるようにすること。そのために、変わる環境やきっかけを用意するのが、スマイルバトンの役割だと考えています。いつか私の代が終わるときに、この社会を受け継ぐ子どもたちが笑顔になり、生きていくことが素晴らしいと思えるように。干支4週目も、精いっぱい背伸びして、挑戦していきたいと思っています。