効率より、大切にしたいこと
えみさんとスマイルバトンはどう出会ったのでしょうか。
私のキャリアを少し遡ると、新卒で大手メーカーに就職し、マーケティングや企業広報、製品PRなどを経験した後、同じ広報職でリクルートホールディングスに転職し、メディア対応を中心としたコミュニケーションの仕事に従事してきました。リクルートにいた4年の間に、長男の出産やいろいろなきっかけがあって、会社員という働き方を変えようと思い至り、2018年にフリーランスのライターになりました。
スマイルバトン代表のなおさんとは、リクルート時代に出会っています。当時、リクルートでは年に1度、グループ各社の広報が集まる研修があって、グループワークで同じ班になって初めて言葉を交わしました。なんだか堂々としているかっこいい人だなぁという印象を持つと同時に、妙な親近感を勝手に抱いていた気がします(笑)。ただ、仕事では複数回取材で一緒になる程度であまり親しくなる機会もなく、私がリクルートを退職するタイミングでランチに誘ってくれて、初めて仕事抜きでいろいろな話をしたことを覚えています。それ以後も、ときどきランチしながら、プライベートなことや仕事のことなどをキャッチアップし合うようになりました。
キャリアとしては長く企業広報をされていたんですね。
そうですね。最初の会社では、広報としてきちんと事実確認をすることや、文章に論理的な破綻がないか、言葉の選び方は適切か、どんなストーリーでどういう見せ方にしたらどんな風に社会で受け止められるかを想像しながらメッセージを作る編集的な視点など、ライティングのベースをものすごく鍛えてもらったなと思います。
リクルートでは、個人のWILL(意志)をすごく大切にする会社とあって、「あなたはどうしたいの?」と常に聞かれていました。最初は戸惑いましたが、もっと自由にありのままに、個を出していっていいんだよという空気の中に身を置けたことは、大きな財産になりました。
企業広報として歩んでいたえみさんがフリーランスになったのは、どういったきっかけがあったんですか?
長男が生まれた頃に、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本を読んだんです。
人生100年時代になった今、自分の人生を柔軟に組み立てて生き方をデザインしようというメッセージが込められた本なのですが、それまで敷かれた道に沿って人生を歩いてきたような感覚があった私にとって、その本のメッセージがすごく響いて…。
いい学歴を目指すとか、大企業の正社員として働くとか、そういう世界観で親も自分も生きてきた。でも、そこに自分の価値観がフィットしない感覚が強くなってきていました。この本を読んだことで、「親の世代の価値観に縛られた人生を生きているかもしれない。私にとっての豊かな生き方って、どんなものだろう?」という問いが頭をもたげ、これがきっかけになって働き方を変えてみようと思ったんです。
どんなメッセージが響いたんですか?
本当に全て!なんですが(笑)、本を読んでから強く意識するようになったのは、人生の幅を広げることにつながる無形資産を作ること。そのメッセージは、私の場合、もっと地域との関わりを持つ意識になろうという具体的な行動に変換されて届きました。
そこから、町内会の役員や学校のPTA活動を引き受けたり、学校が募集するボランティアにも積極的に参加したりするようになり、ご近所のおばあちゃんから同世代のママさんまで、知り合いがグッと増えました。また、学校に出入りすることで先生方の働きぶりや子どもが過ごす環境がリアルに伝わってくるようにもなって、なんだか日々の景色が豊かになったような感覚があったんですよね。
私はもともと、余計なひと手間にちょっと幸せを感じる性格なんですが、育休から仕事復帰して、生産効率を追い求め続ける生活に心身がすり減っていくような気持ちもありました。なのでなおのこと、100年人生を自分でデザインしていくというメッセージに背中を押されたのだと思います。
余計なひと手間に喜びっていいですね。その人らしさやこだわりがあらわれますよね。
生産効率だけを求めると、誰かを応援するとか何かに共感するといったエモーショナルな部分が鈍感になっていって、心があまり動かなくなってしまうように思うんですよね。広報の仕事でも、思わず応援したくなるようなストーリーを丁寧に紡ぎ届けることを大事にしてきました。今後の人生においても、そうしたひと手間を大事にできる自分でありたいと思っています。
親になり『LIFE SHIFT』を読んで、大企業とかポジションとか、なんとなく手放せなかったものを手放そうという勇気に変わった時期だった気がします。リクルートを辞めて、フリーランスのライターを始めたと話したら、なおさんがスマイルバトンでも書いてくださいと言ってくれて。
スマイルバトンのビジョンや目指す世界観には、すごく共感していました。先生の学校が事業化する前からイベントに顔を出したり、HOPEの創刊号から書かせてもらったりしていたので、喜んで!という形で一緒に関わらせてもらい、業務委託契約を経て2023年4月にスマイルバトンに入社しました。